はじめに
能登の旅、連載最終回。日本海に面し、小さな田が海岸まで連なる白米千枚田。その圧倒的な美しさと、いまも残る能登半島地震の爪痕を目の当たりにした旅の終わりを、フォトエッセイでお届けします。ひとり旅の終着点で感じた、静けさと祈りについて。
MIZU今日も、写真と言葉で綴る小さな旅へ。
海へと続く、千枚の祈り|白米千枚田にて
海と空の間で、幾重にも重なる緑

「よくこんな急な斜面を田んぼにしたなあ」。素朴にそう思った。ひとつひとつの田が思いのほか小さくて、機械なんて到底入らなそうな形をしている。それでも代々、丁寧に守られてきたのだと思うと、ただの絶景以上の重みを感じた。海を見ながらお米を作る暮らしって、どんな気持ちなんだろう。しばらく、そんなことを考えていた。
迂回路の先に、まだ残る爪痕
海沿いの道を進むと、途中から明らかに様子の違う迂回路に入った。地面が隆起した跡に造った道路だ。地震から二年半が経っているのに、まだこの状態なのかと、正直驚いた。景色に見とれていた気持ちが、一気に現実に引き戻された感覚だった。ニュースで見るのと、実際に自分の足で立つのとでは、こんなにも受け取り方が違うのかと思い知らされた。
おしまいに
賑やかな空港から、静かな棚田まで。今回の能登への旅は、「非日常の高揚」と「土地の現実」、そのどちらも連れてきてくれた。美しいものをただ美しいと言うだけでは、きっとこの旅は終われない。千枚田の緑の向こうに見た迂回路を思い出しながら、いつかまたこの場所を訪れたいと思う。そのときは、あの道が、もう迂回しなくていい道になっていることを願いながら。そして、この景色を眺めていた翌日、石川と富山は激しい豪雨に見舞われた。まだ癒えぬ地震の傷跡の上に、さらなる被害が重なったと知ったとき、言葉を失った。あの日わたしが見た穏やかな海と棚田は、今も同じ姿でいてくれているだろうか。旅の記録を書き残すことしかできない自分がもどかしいけれど、せめてこの文章が、能登という土地に想いを寄せるきっかけになればと願っている。もしこの記事を読んで、能登という土地を少しでも身近に感じてくださる方がいたら、こんなに嬉しいことはありません。長い連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。
旅の締めくくりに、動画でご覧ください
日常に寄り添うトーン 実際に歩いた迂回路の様子も含めて、動画に残してあります。景色の美しさだけでなく、今の能登の様子も感じていただけたら嬉しいです。旅の最後に、ぜひご覧ください。

- 名称:白米千枚田
- 住所:石川県輪島市白米町ハ部99番地5
- 電話番号:0768-23-1146 輪島市観光課
- 営業時間:通年
- 駐車場:あり
- 世界農業遺産に登録された「能登の里山里海」を代表する景観。令和4年2月に「つなぐ棚田遺産」として選定され、国の名勝にも指定されています。急斜面に、幾重にも段になり海へと広がる田んぼ。その数は全部で1004枚。一つ一つは小さく、耕運機も入らない狭さのため、耕作は昔ながらの手作業で行います。
- 関連サイト:公式サイト
MIZU掲載情報は記事作成時点の内容です。
営業時間や料金等は変更となる場合がありますので、ご訪問前に公式サイト等で最新情報をご確認いただくことをおすすめします。



コメント
コメント一覧 (10件)
おはようございます。
能登の旅連載、最後まで楽しく、そして深く拝読させていただきました。
丁寧に守られてきた棚田の歴史と、今なお残る迂回路の現実。現地で風を感じ、
足で立ったからこその素直な言葉がとても味わい深く、考えさせられます。
千枚田の看板横に佇むルカリオたちの写真も、今の能登の「今」を切り取った
貴重な一枚ですね。
白米千枚田の美しさと現実に向き合うMIZUさんの言葉に、現地を想う
温かな気持ちが溢れていてるなと思いました。
ニュースだけでは分からない「現地の空気感」をシェアしてくださり、
私も能登をより身近に感じることができました。
hassel24さん、おはようございます。能登の連載を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
一つ一つの記事に温かいコメントをいただきながら、最後までこうして読んでいただけたことが、とても嬉しいです。
今回の能登では、美しい風景を撮るだけではなく、実際にその場所に立って、自分の目で見て、風を感じ、そして今も残る迂回路を走ってみたことで、ニュースや写真だけでは分からないものを感じました。
特に白米千枚田は、長い年月をかけて人が守ってきた美しい風景である一方、そのすぐそばには災害からの復旧がまだ続いている現実があります。
「美しい」という言葉だけでは終わらせたくないと思いながら、今回の記事を書きました。
そして、ルカリオたちの写真にも目を留めていただきありがとうございます^^
あの場所に立っているルカリオたちは、まさに今の能登を象徴するような存在にも見えました。昔から続く棚田の風景の中に、現代のキャラクターがいる。その組み合わせが、今この瞬間の能登なんですよね。
「ニュースだけでは分からない現地の空気感を感じることができた」と言っていただけたことは、今回の旅を記事にした私にとって何より嬉しい言葉です。
写真を通して、少しでもその場所の空気や、そこで感じたことをお伝えできたなら、撮影してきた意味があったと思います。
hassel24さんのように、写真の奥にあるものまで受け取ってくださる方がいてくださることが、本当にありがたいです。
長い連載に最後までお付き合いいただき、そして温かい言葉をたくさんいただき、本当にありがとうございました。
災害が起きた時の復旧は、半島が圧倒的に苦戦しています。能登地震の時や熊本の時など支援物資をお送りしているのですが、能登の時は道の選択肢があまりなく大変だと思い
ました。能登の時は港も水位が大きく変わったりしましたが、それでも海路の使い方をしっかりと考えねばならないと強く考えさせられてしまいました。
MTさん、こんばんは。温かいコメントをありがとうございます。
災害からの復旧は、やはり半島という地形が大きなハンディになるんですね。
能登地震の際には、実際に支援物資まで送られていたとのこと。本当に頭が下がります。
能登は道路が限られているうえに、地震によってその道路自体が寸断され、さらに港も大きく状況が変わってしまったとなると、支援物資を届けるだけでも大変な苦労があったのでしょうね。
MTさんがおっしゃるように、こういう地域では「陸路が駄目なら海路」という選択肢を平時から考えておくことが、災害時の大きな支えになるのだと思います。
今回、能登を実際に走ってみて、迂回路を使わなければならない場所がまだ残っていることを目にすると、復旧というのは道路を直せば終わり、という単純な話ではないのだと改めて感じました。
写真を撮るために訪れた能登でしたが、風景だけではなく、そこで暮らす人たちや地域が抱えている現実にも目を向ける機会になりました。
MTさんのコメントを読んで、私自身も「もしまた大きな災害が起きたら」という視点で、いろいろ考えさせられました。
貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございます。
棚田は見ていて良いですね
ただ後継者不足もあるので、なんとか次の世代に受け継いでもらいたいものです。
ここ最近、各地で震多いですね
次は我が身と心配してます。
応援ポチ
こんにちは。いつもありがとうございます。
棚田は、ただ美しい風景というだけではなく、そこに暮らす人たちが長い年月をかけて守ってきたものだと思うと、見え方も少し変わってきますよね。
千枚田も、景観を残すだけでなく、農業そのものをどう次の世代につないでいくのかという難しい問題を抱えているのだと思います。
今回実際に訪れてみて、きれいな風景として写真に残すだけではなく、こうした場所がこれからも続いていってほしいなと強く感じました。
地震も本当に各地で続いていて、「次は我が身」という気持ちは私も同じです。能登を訪れたことで、災害はニュースの中の出来事ではなく、いつ自分の身近で起きてもおかしくないことなのだと、改めて考えさせられました。
お互い、できる備えはしておきたいですね。
応援ポチ、いつもありがとうございます。
私がこの棚田を訪れたときは
どんよりと曇っていた日でした。
なので青い空と真っ青な日本海が
私の記憶とは随分と違っていて
「これが本来の美しさなんだな」と思います。
まだまだ能登半島は復旧半ばでしょうね。
輪島や珠洲の過疎化に拍車がかからないのか
心配になりますわ。
応援ぽち
こんにちは。いつもありがとうございます。
よっちんさんが訪れたときは、どんよりとした空だったんですね。
同じ千枚田でも、空の色や海の表情が違うだけで、ずいぶん印象が変わりますよね。今回、青空の下で見る日本海があまりにも鮮やかだったので、私自身も「こんなに美しい場所だったんだ」と改めて感じました。
ただ、その美しい風景の一方で、能登はまだまだ復旧の途中です。
今回実際に足を運んでみて、道路などの復旧状況だけでなく、輪島や珠洲をはじめとする地域がこれからどうやって人をつなぎ、暮らしを守っていくのかということも気になりました。
もともと進んでいた過疎化に災害が重なったことで、さらに拍車がかかってしまうのでは……という心配は私も感じています。
千枚田のような素晴らしい風景も、そこで暮らし、守っていく人がいてこそ残っていくものですから、何とか次の世代へつながっていってほしいですね。
今回は「美しい能登」を撮りに行ったつもりでしたが、実際に歩いてみると、それだけでは終わらない旅になりました。
よっちんさんの以前の能登の記憶と、今回の写真を重ねて見ていただけたことも嬉しいです。
応援ぽち、いつもありがとうございます。
こんばんは。
白米千枚田の写真、これだけの棚田を作るのは大変だったろうなと思いながら、見させていただきました。
まだまだ迂回路があったりして、大変な現実もあるのですね。
こんばんは。いつもありがとうございます。
白米千枚田を実際に目の前にすると、まず「よくこんな場所に、これだけの田んぼを作ったな」と驚きますよね。
一枚一枚は小さくても、それが斜面いっぱいに連なっているのを見ると、昔の人たちがどれだけの時間と労力をかけて、この土地と向き合ってきたのかを想像してしまいます。
そして、今の能登には美しい風景だけではなく、まだ復旧途中の現実もあります。今回訪れてみて、迂回路を走りながら「以前なら普通に通れた道なんだろうな」と思う場面もありました。
写真ではどうしても美しい部分に目が向きますが、今の能登を訪れたからこそ見えたものもありました。
千枚田がこれからもこの場所に残り続けてくれることを願いたいですね。
コメントありがとうございました。