はじめに
石段を登り始めてしばらくすると、
最初に感じていた“勢い”のようなものは、
少しずつ落ち着きへと変わっていきました。
呼吸を整えながら歩く中で、
目に入ってくるものが、ただの景色ではなく、
意味を持ち始めるのです。
ここから先は、伊香保という土地が積み重ねてきた
時間に触れていく道でした。
石段に刻まれた歴史とことば
温泉都市計画の記念碑

石段の途中に、ひっそりと佇む石碑。
それはこの温泉街が形づくられた始まりを伝えるものでした。
華やかな観光地の印象とは対照的に、
その存在はとても静かで、控えめです。
けれど、その一つの石がなければ、
今見ているこの景色も存在しなかったのかもしれない。
そう思うと、足元の石段一つひとつにも、
別の重みが加わるように感じられました。
与謝野晶子の詩

さらに歩みを進めると、
石段に刻まれた言葉が目に留まります。
与謝野晶子が詠んだ詩「伊香保の街」の全文。
それは看板でもなく、説明でもなく、
ただそこに在る“ことば”。
足元にあるその短い詩は、
読むために立ち止まることで、
初めて心の中に入ってきます。
一歩ごとに、その余韻を踏みしめるような感覚。
石段そのものが、詩の一部のように感じられました。
湯の花まんじゅうの気配

ふと顔を上げると、
視界の中に現れる湯の花まんじゅうの看板。
それはどこか親しみやすく、
緊張していた体の力を少しだけ抜いてくれる存在でした。
歴史や詩に触れたあとだからこそ、
こうした何気ない“日常の気配”が、
より温かく感じられます。
甘い香りが漂ってくるような錯覚に、
思わず足を止めたくなりました。
青空へと続く階段

再び石段に視線を戻し、上を見上げる。
急な傾斜の先に広がるのは、
爽やかな青空でした。
ここまで登ってきたことを、
静かに肯定してくれるような景色。
まだ先は続いているのに、
この瞬間だけで、少し満たされた気持ちになる。
そんな不思議な感覚を覚えながら、
もう一度、足を前へと運びました。
おしまいに
石段の途中には、ただの“通過点”ではない
いくつもの意味が散りばめられていました。
歴史を伝える石碑、
心に残る詩の言葉、
そしてふとした瞬間に現れる日常の風景。
それらが重なり合うことで、
この道は単なる階段ではなく、
ひとつの文化の流れとして存在しているのだと感じます。
次はいよいよ、石段の先に佇む神社へ。
静けさに包まれた場所へと歩みを進めていきます。

- 名称:伊香保温泉石段街
- 住所:群馬県渋川市伊香保町伊香保76−5
- 定休日:なし
- 営業時間:24時間
- 駐車場:あり
- 関連サイト:渋川伊香保温泉観光協会
- 400年を超える歴史がある有名な石造りの急階段。飲食店、土産物店、旅館が立ち並ぶ。
MIZU掲載情報は記事作成時点の内容です。
営業時間や料金等は変更となる場合がありますので、ご訪問前に公式サイト等で最新情報をご確認いただくことをおすすめします。


コメント
コメント一覧 (12件)
まんじゅうの看板と看板の組み合わせが伊香保らしくていい着眼点ですね!私の場合は伊香保温泉は仕事で海外のお客様を連れて来たことがあって写真どころではありませんでした。この先の四万温泉は撮影も兼ねての訪問でした。伊香保の階段はおっしゃる通りいい時間帯に行きたいものですよね。
こんばんは!コメントありがとうございます。
まんじゅう看板の組み合わせ、伊香保らしい空気が出ていて、つい足を止めてしまいました(笑)。温泉街独特の少し懐かしい雰囲気がありますよね。
MTさんは海外のお客様をご案内されたことがあるのですね。それは確かに「撮影どころではない」状況だったのが想像できます(笑)。でも逆に、案内する立場だからこそ見えてくる伊香保の魅力もありそうですね。
四万温泉まで行かれているのもさすがです。あちらはまた違った静かな風情がありますよね。
伊香保の石段は、やはり朝夕の光が入る時間帯にじっくり撮ってみたくなります。SONY機であの柔らかな階調をどう切り取るか…なんて考えながら歩いていました(笑)。
いつも刺激をいただきありがとうございます!
与謝野晶子…
彼女は大阪出身。大阪市の南にある堺市の生まれです。
大阪の南部ってあまりいいイメージがないでしょうが
彼女のような人もいるんですよ^^
応援ぽち
コメントありがとうございます!
与謝野晶子が堺のご出身というのは知っていましたが、こうして伊香保の石段で彼女の言葉に触れると、また違った距離感で感じられますね。
大阪南部には独特の人情味や文化がありますし、与謝野晶子のような感性豊かな人物を生んだ土地だと思うと、やはり魅力深い地域なんだなあと感じます。
石段を上りながら読む詩は、ただ文字を読むのとは違って、不思議と心に入ってきました。
応援ぽちもいつもありがとうございます!
群馬県って伊香保温泉以外にも
草津温泉、万座温泉、四万温泉など
名湯が多いですよねぇ。
大阪は温泉が少ないので
温泉地が多いところは羨ましいです。
応援ぽち
コメントありがとうございます!
群馬は本当に名湯が多いですよね。伊香保、草津、万座、四万…それぞれ泉質も空気感も違っていて、「次はどこへ行こうか」と考えるだけでも楽しくなります。
大阪は確かに温泉地のイメージは少ないですが、そのぶん信州や群馬方面へ行かれた時の「温泉旅感」はより特別かもしれませんね(笑)。
今回歩いてみて、温泉街というのはお湯だけでなく、坂道や石段、湯けむりや匂いまで含めて魅力なんだなあと改めて感じました。
応援ぽちもいつもありがとうございます!
こんばんは
群馬遠征の続編、今回も伊香保の情緒がじんわりと伝わってくる
素晴らしいレポートですね!
石段に直接刻まれた与謝野晶子の「伊香保の街」の詩、看板ではなく
“ただそこに在る”という表現に深く引き込まれました。「読むために
立ち止まることで、初めて心の中に入ってくる」という言葉通り、
一段ずつ詩をなぞっていく丁寧な歩みとお写真が重なり、読んでいる私もその場に立ち止まっているような静かな余韻を感じています。
こんばんは。いつもありがとうございます!
今回も細やかに読み取っていただき、本当に嬉しいです。
「ただそこに在る」という部分に触れていただけたことが、とても印象に残りました。看板として主張するのではなく、石段の風景そのものに静かに溶け込んでいるからこそ、読む側も自然と歩みを緩めてしまうのかもしれませんね。
私自身、一段ずつ言葉を追いながら歩いているうちに、ただ観光しているというより、「伊香保の時間」をゆっくり辿っているような感覚になっていました。
hassel24さんのお言葉の通り、立ち止まって読むことで初めて入ってくる空気や余韻があって、それは写真だけでも文章だけでも届ききらない、不思議な体験でした。
読んでいる方にもその静かな時間が少しでも伝わっていたのなら、とても嬉しく思います。いつも本当にありがとうございます!
伊香保温泉は知ってますが、九州からだと遠い(;^_^A
でも有名な温泉地なので一度は訪問したいですね
温泉地に付き物の温泉饅頭
気になります(笑)
コメントありがとうございます!
九州からだと、やはり群馬はなかなかの遠征になりますよね(笑)。
でも実際に歩いてみると、「有名なのも納得だなあ」と感じる温泉街でした。石段を中心にした独特の風景や空気感があって、ただ歩いているだけでも旅情を感じられます。
そして温泉饅頭…やはり気になりますよね(笑)。あの甘い香りが漂ってくると、つい足を止めてしまいました。温泉地に来た実感を一番感じる瞬間かもしれません。
いつかNOBさんがバイクで関東方面へ来られる機会があれば、きっと道中も含めて楽しい旅になりそうですね。応援もありがとうございました!
こんばんは。
MIZUさんが伊香保温泉を豊かに読み取れたのは石段だったからではないかと思いました。
この町が、平坦な道でできていたら、こんなには読み取れれかったかもしれないなと思いました。
こんばんは。コメントありがとうございます!
なるほど…「石段だったからこそ」という視点、とても深いですね。
確かに平坦な温泉街だったなら、ここまで「一歩ずつ進んでいく感覚」や、「振り返るたびに変わる景色」は生まれなかったかもしれません。
上ることで息が少し上がり、立ち止まり、また歩き出す。その繰り返しの中で、自然と周囲をゆっくり見る時間ができていた気がします。
石段そのものが、旅人の気持ちを少しずつ切り替えていく装置のような存在だったのかもしれませんね。
いつも、こちらが気づかなかった視点をいただきありがとうございます!