目次
はじめに
歩みの先で出会ったのは、
華やかさとは少し違う、静かな春の姿でした。
満開を過ぎ、風にほどかれた桜たち。
その花びらは、空から地へとやさしく舞い降り、
別のかたちで春を残していきます。
咲くことが終わりではなく、
散ることで深まっていく美しさ。
この場所で出会った、もうひとつの春です。
ほどけながら、春はやさしく残っていく

やわらかな光の中で、桜は静かに咲いていました。
透けるような花びらの奥に、
ほんのりと色づく芯の赤。
その繊細な美しさは、
触れれば消えてしまいそうなほど儚いものです。
満開の華やかさとは違う、
ひとつひとつを見つめたくなるような静けさ。
散りゆく前の、
最後のきらめきがそこにありました。

やわらかな苔の上に、
そっと置かれたように散る桜の花びら。
風に運ばれてきたそのひとひらは、
どこかまだ温もりを残しているようでした。
鮮やかな緑と、淡い桜色。
対照的な色合いでありながら、
不思議なほど静かに溶け合っている。
咲いていた時間が、
そのまま地面へと受け継がれていくような、
そんなやさしい終わり方でした。
おしまいに
歩き始めた春は、
やがて色を重ね、広がり、
人の手のぬくもりを感じながら、
静かにその余韻へとたどり着きました。
この日、日産ビオパーク西本郷で出会った風景は、
ただの季節の記録ではなく、
心に残る“春の時間”そのものでした。
また季節が巡る頃、
ここにはどんな色が広がっているのでしょうか。
そんなことを思いながら、
ゆっくりと、この場所をあとにしました。

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