手を清め、心を整える

苔に覆われた石の器に、山の水が静かに流れ込む。音を立てるほどでもなく、ただ一定のリズムで満ちてはこぼれる。その水をすくうための柄杓は、長い時間をここで過ごしてきたかのように、自然に馴染んでいる。
手を差し入れると、水は驚くほど冷たく、指先から余分な思いが抜けていくようだ。背後では石仏たちが変わらぬ姿で佇み、境内には人の声よりも水音と風の気配が満ちている。
祈りの前に手を清めるという行為は、形だけの作法ではないのだと、この場所が教えてくれる。立ち止まり、呼吸を整え、心を今ここに戻すための時間。
大岩山日石寺の水は、語らず、急がず、ただ静かに流れ続けている。
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最後までご覧いただき、有難うございます。


コメント
コメント一覧 (8件)
おはようございます
お清めの手水は自然の湧き水のようですね
冷たい水で気持ちも引き締まるでしょうね
べり~*さん、いつもありがとうございます。
そうなんです。マジ冷たいっす(笑)山寺らしい手水ですね。ゆっくり眺めていたいそんな時間でした。
おはようございます。
素敵な記事ですね。静謐な境内の空気感や、
冷たい水の感触まで伝わってくるようです。
「形だけの作法ではない」という言葉に、
日石寺の清らかな水が心まで洗い流してくれる
情景が目に浮かびました。日常の喧騒を忘れ、
ふと立ち止まって呼吸を整えたくなるような、
温かくも凛とした文章に癒やされました。
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hassel24さん、いつもありがとうございます。
丁寧に読んでくださり、そして心に響くコメントをありがとうございます。
手水に触れたときの冷たさや、水音が響く境内の静けさは、
自然と呼吸が深くなるような感覚がありました。
「形だけの作法ではない」という一文に共感していただけて、とても嬉しいです。
日石寺の水は、手だけでなく心までそっと洗い流してくれるようでした。
応援も、いつも本当にありがとうございます。
苔生える手水って、山寺らしい風景ですね
水の音が聞こえてきそう
NOBさん、こんばんは。
まさに山寺ならではの手水ですよね。
苔に包まれた石と、絶えず流れる水がとても自然で、
しばらく立ち止まって耳を澄ましてしまいました。
水の音まで感じ取っていただけて嬉しいです。
静寂の中でこのような光景に出逢うと身の引き締まる想いがしますね。
今回の寒波でここも雪が積もりさらに風情を醸し出していることでしょう?
応援ぽち
RV車さん、こんばんは。
静寂の中で出逢うこの手水は、
自然と背筋が伸びるような気持ちになりますね。
今回の寒波で、この辺りもすっかり雪に包まれ、
さらに凛とした空気に変わっていると思います。
雪と苔、そして水音…また違った表情を見せてくれそうです。
応援ぽち、ありがとうございます。