落ち葉の海に、ひとしずくの光

春は、空からではなく、足もとから始まるのかもしれない。
色を失った落ち葉が重なり合う林床。
冬の気配をまだ手放しきれない地面の上で、小さな黄色が、そっと灯っていた。
それは叫ぶでもなく、誇るでもなく、ただ静かに、確かな光を放っている。
富山県中央植物園にて
この日、園内はまだ冬の延長線上にあった。
木々は芽吹きを待ち、風は少し冷たい。
けれど、地面に視線を落とした瞬間、季節はすでに動き始めていた。
福寿草。
春の訪れを告げる花として知られながら、その姿は驚くほど控えめだ。
しゃがみ込み、さらに視線を低くして、ようやく目が合う。
花を見るというより、春の始まりを“見つける”という感覚に近い。
冬と春のあわい
この一枚で残したかったのは、満ち足りた春ではなく、春になろうとする途中の時間。
まだ開ききらない花弁。
周囲を埋め尽くす枯れ葉。
その対比が、季節の境界線を浮かび上がらせる。
春は突然やってくるのではない。
落ち葉の下で、静かに、確実に、準備を重ねている。
その小さな証が、ここにあった。
おしまいに
足を止めなければ見えない景色がある。
視線を低くしなければ出会えない春がある。
落ち葉の海に灯る、ひとしずくの黄色。
それは、季節が確かに動いているという、やわらかな合図だった。

コメント
コメント一覧 (8件)
フクジュソウ…
名前に「福」と「寿」があるのですから
なんともありがたい花ですよね^^
この季節は登山道などで
よく見かける花なんですよ。
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よっちんさん、コメントありがとうございます。
フクジュソウ、本当におめでたい名前の花ですよね。
落ち葉の中から顔を出すあの黄色を見ると、春が少しずつ近づいているのを感じて嬉しくなります。
登山道でふいに出会えると、思わず足を止めて見入ってしまいますよね。
応援ぽちもありがとうございます。とても励みになります^^
福寿草は、寒いうちから花を咲かせることから、強い生命力を感じます。特に受粉を考えると、寒いうちから活動してる虫たちからの恩恵を独占しようと言う生きるための戦略なんですよね。
MTさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
福寿草の花には、そんな生きるための戦略があるのですね。とても興味深く読ませていただきました。
まだ寒い時期に咲く姿からは、確かに強い生命力を感じますね。
小さな花ですが、自然の知恵が詰まっているのだと思うと、ますます愛おしく感じます。
いつも素敵なお話をありがとうございます。
おはようございます。
静かに、でも確実に動いている季節の鼓動を感じました。
枯れ葉の中の小さな黄色い灯火、本当に美しいですね。
『落ち葉の海に灯る、ひとしずくの黄色』という表現が、
この一枚にぴったりですね!
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hassel24さん、コメントありがとうございます。
「枯れ葉の中の小さな黄色い灯火」という表現、とても素敵ですね。
落ち葉の中でひっそりと咲く福寿草は、本当に小さな灯りのように見えました。
季節が静かに動き始めている、そんな雰囲気を感じていただけて嬉しいです。
応援ポチもありがとうございます。とても励みになります。
おはようございます
私も初めて見たときは、こんなに小さいんだとびっくりしました
葉っぱの地面から芽を出して開いた花がほんとに可憐ですね
べり~*さん、コメントありがとうございます。
そうなんですよね、実際に見ると「こんなに小さいんだ」と思いますよね。
落ち葉の間からそっと顔を出して咲く姿が、とても可憐で印象に残ります。
小さな花ですが、春の気配をしっかり感じさせてくれる花ですね。